論文の「et Al.」の意味とは?読み方・人数ルールと正しい使い方
学術論文や調査レポート、専門的な技術記事を読んでいると頻繁に目にする「Smith et al.」や「山田 et al.」といった文字列。文脈から「共同研究者のことだろう」と推測できても、正確な意味や正式名称、なぜ末尾にだけピリオドが付いているのかまでは把握しきれていないケースが少なくありません。
特に卒業論文や学術論文の執筆、ビジネスにおけるリサーチ業務に携わる際、こうした表記ルールを曖昧にしたまま記述すると、査読者やクライアントからの信頼を損ねる要因にもなりかねません。本稿では、日常業務や研究執筆で迷わないために押さえておきたい「et al.」の基礎知識、人数の基準、表記の作法を整理してお伝えします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「et al.」はラテン語「et alii(および他の人々)」の略であり、学術論文などで複数の共著者を簡潔に示す表記。
- 要点2:「et」は単語そのもののためピリオドはおかず、略語である「al.」の直後にだけピリオドを打つのが鉄則。
- 要点3:最新の国際規格(APA第7版など)では著者名が「3人以上」の場合、初出時から筆頭著者+「et al.」と表記する。
【基礎知識】論文で頻出する「et al.」の正式名称とカタカナの読み方
学術文書において共著者群をスマートに省略する表記として広く定着しているのが「et al.」です。ラテン語の「et alii(エト・アリー/男性または男女混成)」、「et aliae(女性)」、「et alia(中性・事物)」の省略語であり、英語の「and others」、日本語では「〜ほか」「〜ら」に相当する意味を持っています。
日本語の研究現場やゼミの現場では、カタカナで「エト・アル」または「エット・アル」と発音されるのが一般的です。英語圏の研究発表や国際カンファレンスにおける読み方としては、「エット・アル(/ɛt ˈæl/)」と発音されるケースのほか、ラテン語の語源に配慮せず文字通り「エ・アール」と読まれる例も散見されます。ただし、フォーマルなプレゼンテーションでは「and colleagues(および同僚たち)」や「and others」と言い換えて読み上げる研究者も多く存在します。
【ピリオドの位置と理由】「et. al.」は誤表記?なぜ末尾にだけ点がつくのか
論文執筆を始めたばかりの頃に最も起こりやすいミスが、ピリオドの位置の間違いです。「et. al.」のように両方に点を付けたり、「et al」と省略マークを落としてしまったりするケースが後を絶ちません。正しい表記は「et al.」であり、ピリオドは後ろの「al」にしか付けません。
この表記規則には明確な文法上の理由が存在します。ラテン語において接続詞である「et」は、英語の「and」と同じ「完結した一単語」です。省略されていない独立した単語であるため略記を表すピリオドは一切不要となります。一方で「al.」は「alii」という単語の末尾を削った省略形であるため、その目印として末尾にピリオドが打たれています。英語の「Doctor → Dr.」や「versus → vs.」に点がつくのと同じ理屈です。
【何人から使う?】英語論文における複数著者の引用ルールと採用基準
執筆者を悩ませる最大の論点が「著者が何人以上集まったときにet al.を適用するのか」という基準です。このしきい値は投稿する論文誌が採用しているスタイルガイドによって指定されていますが、現在の人文・社会科学・学際研究で世界基準となっているAPAスタイル(第7版)の規定は非常に明快です。
APA第7版では、本文中で文献を引用する際、「著者が3人以上」であれば最初から共著者を省略し、「筆頭著者姓 + et al.」の形式を用いることと定められています。過去の第6版では「3〜5人の場合は初出時のみ全員の名前を書き、2回目以降にet al.を用いる」という煩雑なルールが存在していましたが、文書の可読性を高める目的で簡素化されました。
一方で著者が2人の場合は、初出・再出を問わず「Smith and Jones (2025)」や「(Smith & Jones, 2025)」のように2名とも併記するのが原則です。なお、理工学系で汎用されるIEEEスタイルの本文引用でも3人以上から適用されるのが通例ですが、スタイル規程によっては細かい差異があるため投稿規定の事前把握が欠かせません。
【etc.との違いと使い分け】対象は「人」か「物」か?決定的な境界線
日常の英作文でよく使われる「etc.(et cetera)」と「et al.」は、どちらも「その他」を指す表現ですが、両者には「対象が事物か、人間か」という決定的な棲み分けが存在します。
「etc.」はラテン語で「その他の物事(and other things)」を指すため、本質的に物品、概念、行為の列挙を省略するために用いられます。したがって、共同研究者や特定の著者陣を指して「Tanaka, etc.」と記述するのは文法上根本的な誤りであり、人物に対して失礼にあたる表現と見なされます。学術論文やビジネス報告書において人物群を束ねる場合は、例外なく「et al.」を選択する必要があります。
【参考文献の実践ガイド】イタリック(斜体)の指定と日本語訳の作法
本文引用から巻末の参考文献リスト(References / Bibliography)に至るまで、「et al.」を使用する際にはいくつかの書式ルールを守る必要があります。特に「斜体(イタリック)にするかどうか」は誤認されやすいポイントです。
かつては外来語・ラテン語表記を明確にする意図から「et al.」とイタリック表記にすることが一般的でした。しかし現行のAPAスタイルやMLAスタイルでは、すでに英語圏の学術界へ完全に定着した慣用語句と解釈されるため、立体(通常のフォント)で記述することが指定されています。ただし、一部の生物学・医学系ジャーナルでは現在も斜体指定が残存しているため、最終的な投稿先規定の確認が求められます。
また、日本語論文に海外の文献を引く際の訳し方としては、文脈に応じて以下の形式を整合的に統一して使用します。
・「〇〇ほか」:文部科学省の公文書や多くの学術会誌で最も好まれる標準的な訳
・「〇〇ら」:理系論文や短報論文で多用される平易かつ一般的な表現
・「〇〇等」:官公庁系の報告書や法的文書で厳密さを期す際に使われる表現
【et al.の意味と使い方】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「et al.」の直後にカンマを置くべきなのはどのような場合ですか?
A1:括弧内で発行年と並列させる場合(例:(Tanaka et al., 2025))はカンマが必要です。一方で本文中で主語として機能させる文脈(例:Tanaka et al. (2025) reported that...)を展開する場合は、「et al.」の直後にカンマを打たず、直後に括弧で年を続けます。
Q2:主語として「Smith et al.」を置く場合、後続の動詞は単数扱い・複数扱いのどちらになりますか?
A2:意味的に「スミス氏およびその他の著者たち」という複数人を表しているため、動詞は複数扱い(plural)になります。現在形であれば「Smith et al. report(reportsは不可)」、完了形であれば「Smith et al. have shown」と記述するのが正しい文法です。
Q3:参考文献一覧(巻末リスト)でも「et al.」で著者を省略して良いですか?
A3:原則として巻末リストでは著者を安易に省略しません。たとえばAPA第7版では、著者が20人までは全員の氏名を明記することになっています(21名以上の場合のみ19人目まで列挙したのち中略記号を挟んで最終著者を記載)。一部の学会要旨やジャーナルを除き、本文引用と参考文献リストではルールが異なる点に注意してください。
まとめ:学術リテラシーを高めて信頼される執筆を
「et al.」というわずか数文字の記号には、学術執筆者たちが長い歴史の中で培ってきた合理的かつ厳格な引用文化が凝縮されています。ピリオドを打つ位置の必然性や、著者数に応じた正確な線引きを理解して執筆された原稿は、それだけで学術的なリテラシーの高さを示し、読者や査読者に安心感を与えます。
執筆時や英文文献の読解時に少しでも表記に迷った際は「人に対する省略であること」「点が付くのはalの後ろだけであること」という文法の原則を思い出し、確固たる根拠に基づいた記述を行ってください。 (出典: et al meaning(Yahoo!ニュース))